■STORY夕暮れ時の事務所で、ベテラン飼育係の山本と新米飼育係の伊藤は、人工保育で育ったサルの赤ちゃんの一般公開に向けて準備を進めていた。いつもと変わらなかったはずの動物園に、急に警察車両のけたたましいサイレンが響き渡る。 山本と伊藤は事務所の入り口にバリケードを組み、警察の進入を妨害する。 追い詰められた表情の山本のところに駆け込んできたのは、交渉に来た警察官ではなく、若い女性。 この若い女性は、山本の恋人だった。 もちろん家族を持っている山本の恋人と言うことは、秘められた存在と言うことになる。 しかしその彼女も、山本のもとを去るという。 楽しかった思い出を必死に語り、彼女を引きとめようとするも、彼女の意志は固い。 失意の山本のところにやってきたのは、相方伊藤とバイトの男二人。 伊藤はバイト君たちを訓練し、山本に協力させようと言うのだ。 逃げた子ザルの確保…それが彼らの任務。 しかし、どんな手を使ってでも捕獲しようと言う伊藤に対して、山本のトーンは低い。 山本は肝心の子ザルを自らの手で野に放した…そして「動物園に爆弾を仕掛けた」と打ち明ける。 …追い詰められたからこんなことをしたのか? 否。 彼は自らの心を開放すべく、その心の檻を打ち砕こうとしたのだった。 ■COMMENT「ベクトルをマイナス方向へ…」ネガティブ×ネガティブ=ポジティブという澤田の考え方を象徴する台詞だ。 ・担当動物をわざと逃がす。 ・警察沙汰になるような事件を起こす。 ・プライベートでも不倫疑惑。 これら全ては、「落ちるところまで落ちてみろ。そうしたら、後は上がるだけだ。」という澤田からのメッセージだった。 「安全な場所を確保して、自らの心は檻の中に大事に囲ってあるような人生じゃつまらないだろう?」 実にパーソナルなメッセージを強く発信していた、これぞ“澤田ワールド”的代表作。 もちろん、そのメッセージ性の暗さと、現実・非現実が入り乱れる構成の物語の展開で、評判が高かったとは言い難いが…。 ←一覧に戻る |