劇団『彗』第11回公演
ナイトライダーⅡ　～失われたダチョウの行方～

作：網鎖漢＋劇団『彗』　演出：高橋利明

2008年2月2日、3日
瑞穂市総合センターサンシャインホール
みずほ演劇祭2008参加

2008年5月25日
関ヶ原ふれあいセンター
アマチュア演劇講習会モデル上演








【CAST】 【STAFF】
香苗 今田亜季 舞台監督 堤敏之
香苗の父 大橋裕幸 舞台監督助手 井元美緒
香苗の母 松岡司（み） 助演出 澤田公宏
名知晃代（せ） 照明 吉田真子
ＫＩＴＴ 玉井秀典 松永誌乃香（せ）
タイヤ 森島友貴 音響 野原麻希
水野千鶴 清水美里（み）
清水隆之 加藤愛美（せ）
髙橋靖宜（み） 映像効果 後藤誠司
中村太紀（せ） 特殊効果 金武智徳（み）
神田町のママ 神野愛（み） 井元美緒（せ）
渡辺恵美（せ） 舞台美術 奥山誠司
カメラマン高田 丹羽一高 衣装 神野愛
社長 澤田公宏 松岡美紀
軍曹・トラック野郎 澤田公宏 制作 澤田公宏
兵士・トラック野郎 野原康寛 丹羽一高
金武智徳 アシスタント 大橋裕司（み）
清水香里（み）
髙橋靖宜（せ）
神野愛（せ）
小山明日香（せ）
松岡司（せ）
高橋優子（せ）
※（み）・・・みずほ公演、（せ）・・・関ヶ原公演


■STORY

陰謀と破壊と犯罪の渦巻く世界を疾走するナイト２０００。
１９８０年代のアメリカ、ナイト財団が極秘裏に開発した正義の車である。
正義を愛し人命を尊重しながらも、悪は倒すナイト２０００！
この車は正義の騎士として街を疾走していたのである。

そして陰謀と破壊と犯罪が渦巻く２１世紀の岐阜。
この岐阜を疾走する正義の車ナイト２０００は、劇団彗財団によって今ここで復活したのだった。
中村と言う男は、ナラプアと言う貧しい島国に来ていた。
この国でダチョウの飼育を普及させるためだ。

ダチョウは食糧難を迎えようとしている世界の救世主とも言える家畜だ。
成長が早く、育成のコストも安い。
戦火が絶えないナラプアは貧困と飢餓に喘いでいた。
そんな小国を救うべく、そして会社の命運を賭けて、中村はナラプアに来ていたのだった。
ところが、中村の持っているダチョウの卵を狙って兵士達が襲い掛かってきた。
中村のピンチを助けたのはナイト２０００！
そして、今回のナイトライダーは女性だった・・・。
家を飛び出していった娘そっくりのナイトライダーと名乗るその女性は、奥さんに頼まれて中村を岐阜市内の料亭へと送っていくと言うのだ。
中村は料亭へと向かう車中で、娘そっくりのナイトライダーに思い出話を語りだす。

…初めて娘の運転する車でモレラに行くと言ったのに、福井県の水晶浜に行ってしまった事。
…１０年前に鳥インフルエンザや安い外国産鶏肉の影響で潰れかかった会社は、起死回生を賭けてダチョウの飼育に乗り出した事。
…そして、その会社の方針は大当たりして会社は一部上場を果たし、仕事も大忙しとなった事。
…娘が１０歳の夏、大忙しだったが親子３人で水晶浜に行った事。

年頃になった娘は、「お父さんのものと一緒に洗濯しないで！」と言うようになった。
もう口も聞いてくれない。
それは、父として娘と接する時間がなさ過ぎたせいなのか・・・？
そして、中村は娘の幼稚園の運動会に行けなかった事を思い出す。
休みだろうが運動会だろうが、社長の呼び出しには応じて行かなければならない。
「会社の命運がかかっているんだ！」
「お父さんの働きにかかっているんだ！」
「このプロジェクトの成功にかかってるんだ！」
中村は自らを必死に奮い立たせて仕事に励む。

でもそれが娘にさみしい思いをさせる事になっていたのだ。
戦場のナラプアで明かされるダチョウプロジェクトの真相。
そして家を飛び出していった娘の行く末。

全てが結びついた時、中村は父として娘と向き合うことになる。


■COMMENT

ちょうど私の娘も幼稚園に通いだした年、そして私がダチョウ屋を退社した年。
それが２００８年だった。
あまりにもタイムリーな題材だったにも拘らず、私はまたしても主役の座につくことが叶わなかった。
理由は「台詞覚えが悪い」（笑）
この時の作者は私よりもずっとこの中村さんに近い状況だったのだろう。
もしくはそんな状況を乗り越えた少し後だったのかもしれない。
あまりにも“忙しいお父さん”に実感がこもっていた。
そしてそんな“忙しいお父さん”が、私にも理解できた。
はじめて脚本を手にした時、運動会の件は読みながら涙をこらえたのを覚えている。

この作品でも、その動きに随分と磨きがかかった「ナイト２０００」は、ＫＩＴＴとタイヤ達と共に大人気だった。
物語の後半で、登場人物たち（勿論全員全身タイツ）が組体操を披露する場面があった。
この物語にあってその組体操は大きな意味を持っていた。
観客の皆さんにその意味を伝える事ができたかどうかは定かでないが、印象的なシーンのひとつとなっているだろう。

我々劇団員がこの作品において忘れられないのは、“神田町のママ”として舞台に立った神野愛さんが、この年の１０月、癌でこの世を去った事だった。
再演となった２００８年５月の関ヶ原公演の時、彼女は胃全摘出手術直後だったにも関わらず、サポーターとして公演に参加してくれた。
本人は無理してでも舞台に立ちたいと熱望したが、「術後に無理はいけない」と、私が初の座長命令を下したのだ。
結果、２月のみずほ公演が彼女の女優としての最後の舞台となってしまった。
病床の彼女は「最期の時を迎える直前まで台詞の稽古をしていた」と家族から聞かせてもらった。
同い年の彼女は、私の良き相談相手でもあり理解者でもあった。
そんな彼女を失った喪失感は、当時の私には大きなダメージとなった。
この作品以降、本番初日には神野愛さんに黙祷を捧げるのが劇団の行事となっている。
それは、最期まで女優であり劇団員であり続けてくれた彼女への敬服の意の表れでもあり、そんな彼女に対して恥ずかしくない作品を創ろうと言う、劇団員の気持ちの表れでもある。





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